2019/08/07

私は生まれつき好奇心が強い性分なのか、地面を見るとつい穴を掘ってしまいたくなるタイプだ。
実際掘ったところで何も出てこないことが大半なのだが、だからといって「何も出なかったじゃないか!」などと八つ当たりのように叫んでシャベルを放り捨て、そのまま穴を放置して立ち去ってしまえばどうなるだろう? 通行人の誰かがうっかりその穴に落ちて、地上から突然姿を消すようなことになりかねない。
だから自分で掘った穴は、きちんと自分の手で埋め戻しておくことがこの場合大切なマナーなのだ。
「そんなマナーも守れないような人間には、穴を掘る資格などないのだと断言できる。埋蔵金などを掘り当てることを目的に、そこらじゅうの山奥で穴を掘っているような卑しい奴らはきっとマナー知らずの金の亡者たちに違いない。もっとも、そういう人間に実際会ったことはないので想像にしかすぎないのだが……」
大小さまざまの穴が、つねにこの国の地面のどこかに掘られては、ふたたび埋められている。
そんなことを思い浮かべるだけでなぜか顔が綻んでしまい、
「今までに一番大きな穴を掘った人にインタビューしてみたいものだ。それは日本海溝くらいの巨大なサイズの穴だろうか?」
私はそんな夢を思わず口に出していた。
もちろん、すでにその穴は埋め立てられて跡形もなく消えているはずだ。
誰よりも大きな穴を掘ることができる人間は、誰よりもマナーをきちんと守る真面目な人柄に違いない。
マナーもろくに守れない二流の穴掘り人間どもは、一人残らず自分の掘った穴に落ちてしまえ!