2019/08/25

買い物に行こうと思って玄関を出たところ、思いのほか天気が良くないようで先ほど干したばかりの洗濯物のことが気になった。
「これでは外出中にひと雨きてもおかしくないぞ。洗濯物は室内に移動させておくべきだろうか? だがそれでは、いくらまだ夏が続いているとはいえ、乾くまでの時間が遅れて洗濯物に雑菌が繁殖し、いやな臭いを発し始めてしまうかもしれない。そんなことは御免だが、雨に濡れた場合は乾く時間はさらに先延ばしになるわけだ。なんとも悩ましい話だ……」
私は考えごとに夢中になっていたため、道の真ん中に立ち止まって周囲のことが全く目に入らなくなっていたらしい。
そこへ猛スピードで突っ込んできたトラックがいたからたまらない。おそらく運転手は運転しながらスマホでかわいらしい動物の動画などを眺めていたのだろう。その動物愛護精神があだとなり、トラックは私を空高く跳ね飛ばしたのだ。
だが、これははたして偶然なのだろうか? それとも迷う私に何か超越的な存在が答えを差し出してくれたのかもしれないが、私はちょうどアパートの軒先の自分の洗濯物の前にまるで体操選手のように着地したのだった。
そこへぽつぽつと、懸念していた雨が落ち始めた。私はあわてて洗濯物を取り込むと、抱えて部屋の中へと飛び込んだ。
「少しでも雨の心配があるときは洗濯物は室内に干すべきだ。そのためにも部屋干し用の洗剤を今度から買っておくべきだと、あの動物好きな運転手は私に伝えたかったのかもしれない。いささかその伝え方が強引ではあったが……」
私はあちこち痛む体をさすりながらそうつぶやいた。