2019/08/02

夏本番といった感じの日々が続くため、ちょっと足をのばして海までドライブをすることにした。
だが運転免許は持っていないので、当然乗っていくのは自転車だ。風を切って走るのは初めのうちは気分が良かったが、たちまち汗だくになり喉の渇きが止まらなくなった。
水筒の中身はとっくに空になっている。こんなことでは海にたどり着く前にギブアップする羽目になり、せっかくのドライブ計画が台無しだ。今日のバカンスを成功に導くにはどうしたらいいのか、直射日光を頭に浴び続けたためにいいアイデアが思い浮かばなくなっていた私は、自暴自棄になったのかふらふらと車道に飛び出していった。
どうやらいつのまにか私は、どこかの高速道路に迷い込んでいたらしい。ものすごいスピードで背後から飛ばしてきたトラックが、ブレーキを踏む間もなく私を乗せた自転車に激突。自転車ごと宙高く舞い上がった私は、見事な放物線を描いて地上に落下していった。
だが落ちた場所がたまたま海岸の波打ち際だったため、まわりの海水浴客にはひどく驚かれたものの、奇跡的に無傷で済んだのである。
目的地へは一瞬でたどり着けたし、波に洗われた自転車の籠にはたくさんの貝殻や海藻、魚などが入り込み、お土産もたっぷり手に入った。結果的にいいことづくめで、ぜひ誰もが自転車で高速道路に迷い込むことをお勧めしたい気持ちになったものだ。
だが世の中では悲惨な交通事故の犠牲者が後を絶たず、私のような例はむしろ少数派だろう。そう思うとツイッターなどで気軽にみんなにお勧めする気にもなれず、私は全国の交通事故犠牲者の冥福を祈って、なんとなく道路の方角へ向かって手を合わせた。