2019/04/02

人々から笑顔が失われていくような時代がこれ以上続くなら、もはや今まで笑顔とされてきたような派手な表情を我々の社会から廃止して、これまでなら無表情と呼ばれていたような地味な顔の状態をあらためて「笑顔」として定義し直せば、この社会はふたたび笑顔にあふれた素晴らしい場所として生まれ変わり、かつてのような活気を取り戻すのではないか?
そんなアイデアをつい今しがた思いついたので、さっそく政府の「国民のアイデア募集ダイヤル」に電話して提案してみた。
すると電話の向こうで話を聞いていた女性はにわかに声をひそめた。
「ここだけの話ですが、実はそのアイデアはすでに有識者の会議の中で提案され、採用が決定しているのです。おそらく次のオリンピックの開催前後あたりには正式発表があるはずですから、私たちの社会はふたたび人々の笑顔にあふれた素晴らしい本来の状態を取り戻すことが確実なので、どうか楽しみに待っていてくださいね」
そのような満足のいく回答を得られたことで私は非常に感慨をおぼえ、つらく苦しい時代の終了が宣言されることの目印になる次のオリンピックの開催が、本当に楽しみでしかたなくなった。