2019/03/01

「おまえの生き方は根本的に間違っている。自分の人生にとっても、周囲の人の生活にとってもひたすら害悪をまき散らす以外のことをしていないことがわかっているのか? そこには目を覆うばかりの惨状が広がっているのみ。いっそ思い切ってゼロからすべてをやり直すつもりで、今すぐここから飛び降りてしまえばどうか? それが私からの提案だ。今すぐここから飛び降りてしまえ!」
そんな厳しい意見を含んだ怒声のようなものが、どこからか私の耳に聞こえてきた。
だが飛び降りようにも私は平坦な地面を歩いている最中であり、もし怒声の意見が正しいのだとしても、それに従う方法が見当たらない有り様なのだ。
おろおろと周囲を見渡していると、ふと雑草の上に置き去りにされたメタリックなボディの機械が目についた。
それは最新の機能を備えた高価なラジカセのようだった。その透明な窓から覗く高音質のカセットテープがくるくると回転していることが見て取れる。
「おまえの生き方は根本的に間違っている」
ふたたびラジカセのスピーカーが説教を開始した。私はその内容をあらためて吟味したいと思い、メモ帳を片手にテープの音声に耳を澄ませた。
そのとき私は自分が相当な尿意を感じていることに突然気がついたのである。
「あっ、どこか近くにトイレがないか確認したうえで、すぐにそこに駆け込まなくては大変なことになるぞ!」
そう全てを言葉にするかしないかのうちに、私は尿を漏らしていた。
なんとも不快な感覚が下半身に広がり、思わず私は顔をしかめた。
だがすでに漏らしてしまったものを悔やんでもどうにもならない。ここは前方だけを見つめて、今できることをよりよき未来のために積み上げていくことが大切なのではないか?
そう判断した私は、ふたたびラジカセの音声に意識を集中させた。