2019/03/05

近所に行きつけの店を持ちたい、というのが私の以前からの願いだった。
だからたまたま目についた店のドアを開けたのだが、看板が緑色だったのがその一番の理由だ。今日偶然にも私は緑色のシャツを着ており、まるで自分がその店を訪れるための制服を着込んでいるような気がしたのである。
ところが足を踏み入れると、店員らしい男も客らしい男や女も、みな様々な色や柄の服を自由に着こなしていた。誰一人として緑色の衣類を身につけてなどいなかったのだ。
私は非常な屈辱と恥ずかしさをおぼえ、たまらず店を飛び出していた。
「今の男、緑色のシャツなんて着てたよな」
「うちの看板が緑色だから、仲間だと思ったんじゃないですかね?」
「そういう感覚がダサいんだよね。この店にもっともふさわしくないタイプだよ」
そんな常連客と店員の会話が背後から聞こえてくることを予想したのだが、実際には私はその声を耳にすることはなかった。
あまりにも素早く店を飛び出したため、彼らの目には私の姿が見えなかったのかもしれない。
「今一瞬何か緑色のものが目に入ったな」くらいのことは、もしかしたら思ったかもしれないが。