2019/03/12

これといって仕事をしていない人間が目を覚ますと、しばらく布団の中で考えごとに没頭した挙句、そのまま眠りの中へ引き戻されてしまうことがよくある。
その場合、考え事と夢の区別がつきにくいので、たとえば「窓の外で激しい雨の音がするぞ。これでは甥っ子の運動会は中止だな」と思って安心して二度寝したつもりだったが、実はその日は朝から一滴も雨の降らない快晴だったりすることがある。
「おじさん、運動会に応援に来てくれるって言ったのに嘘つき! おかげで徒競走でビリになっちゃったよ!」
などと後日甥っ子に叱られる破目になり、伯父としての面目は丸潰れだ。夕方までスヤスヤ寝ていたと正直に答えるわけにもいかず、何か急用があった振りをして適当に誤魔化さなければならないだろう。
もちろんこれは喩え話であって事実ではない。現実には甥っ子は大学をとっくに卒業しており、三十近い今もこれといった就職先がないままふらふらしているからだ。
だから彼の出場する運動会を見学する機会は、おそらく永遠に訪れないのである。