2019/03/11

私たちが生まれた頃に世の中を動かしていた人々のうち、今では何パーセントくらいが存命なのだろうか?
年齢を重ねるほどにその数字は減っていき、ゼロへと近づいていく一方なのだが、それは自分にとって故郷のように当たり前だった世界がしだいに奈落へと崩れ落ちていくことを意味している……。
あの頃目の前に広がっていた活気に満ちた社会は、今では半分以上が地面の下へと消えてしまった。そこに暮らしていた人たちの喜怒哀楽は、ただの白骨の取る様々なポーズに取って代わられ、不気味な人形劇のように土の中で続きを演じられているのかもしれない。
過ぎ去った時代を懐かしみ、そこで経験した出来事を甘いポップスの歌詞のように反芻することは、そのような白骨たちの劇場に自らも参加することではないだろうか。だとすれば地面の下で身動きが取れず呼吸もできない、という地獄の苦しみと引き換えにしか、そのストーリーへの参加権は入手できないのだと思われる。
近所の墓地を歩いているとそんな考えが頭に浮かび、咄嗟にメモを取るものがなかったので地面に落ちていた古釘を拾い、手近な墓石の裏側に書き込んでおいた。
だが家に帰るとそんなことはすっかり忘れてしまったので、今日数年ぶりにその墓地を訪れたところ偶然にもメモ入りの墓石を発見。そのため、ようやくこうして晴れてメモの内容を世に出すことができたのだ。
こんな不思議な縁を感じる出来事もまた、死者たちから現在の私たちに託された何らかのメッセージなのかもしれない。