2019/01/10

冷蔵庫にちくわがあったので穴を覗いてみると、知らない男がちくわを目にあててじっとこっちを見ていた。
「誰だ貴様!」と思わず叫びそうになったのをぐっとこらえると、私は慌てることなく冷静に状況をこう判断した。
「これはたまたま目の前にある鏡に反映した自分自身の姿なのだ。べつにちくわの穴を覗いている頭のおかしい中年男が私の部屋に無断侵入したわけじゃない」
そしてちくわをそっと目から外してみたのだが、元通りの広さを取り戻した視界には鏡などどこにも見当たらなかった。
私は一年くらい前に部屋の鏡に誤って頭をぶつけて破損し、血まみれになったガラス片を拾って不燃ごみに出したことを思い出した。
はっとして顔から血の気が引いていくのを感じながら、私は手元にあったちくわのパッケージを確かめてみた。
すると消費期限の表示がちょうど一年前である。
どうりで変な臭いがすると思った。食べる際にはよく火を通すことを心掛けよう。