2019/01/22

資本主義が諸悪の根源であり、すべての資本家を二度と出られない深い穴の底へ突き落したのち上から土砂を投入することによってしかこの世に蔓延する苦しみを取り除くことはできない。
薄々そんな気がしていたのだが、今日アパートの前にとくに意味もなく五分ほど立っていたらそれが確信に変わっていったので、私は資本家への憎しみのあまり訳の分からない怒声を発しながら、周囲の枯れ草を蹴飛ばしたり向かいの家の塀に「資本家のバカ」と落書きをしたりした。
だが向かいの家はごく庶民的なつつましい規模の民家に過ぎなかったので、このメッセージの矛先にふさわしくないと反省してあわてて落書きを消した。それは落書きの上から横線を引いただけなので、塀の汚れとしては何ら解決になっていない状態だったのだが。
「とはいえ、このような一軒家を所有するだけの収入や地位を得ている人物を、われわれの同志とみなすのも無理がある気がする。この家の住人自身が資本家とまでは言えないにせよ、資本家側にすり寄ることで多くの恩恵を受けている者であり、この塀もまたその特権的な立場を維持するために建てられた、人々の分断の象徴なのである」
すぐにそのことにピンときた私は塀に再び「資本家のバカ」と書き足してから、自分の部屋へと戻っていった。お湯を注いだカップラーメンを放置していたことを急に思い出したためだ。
容器の中の汁を全部吸い込んでしまった麺はふやけきって、資本の豚の脳味噌のように見えた……。