2019/01/19

山の上に神社があるという噂を聞いたので、一念発起してのぼってみることにした。頂上には五分ほどで到着したが、神社はおろか鳥居のひとつも見当たらなかった。そこにはコンクリートで固められたちょっとした広場があるだけだった。悪質なデマだったのか、とがっかりして下山しようとした私の心に、いかにも歴史のありそうな古びた社殿のようなものが浮かび上がった。思わず駆け寄った私は財布から最後の一枚となった千円札を取り出すと、すばやく賽銭箱に投入した。現実ではあきらかに躊躇してしまう金額だが、心の中ではその必要もないからだ。そして鈴を鳴らすとかしわ手を打ち、世界平和の早急な実現を心の底から祈ったのである。
山を下りてからふと財布を確認したところ、千円札が見当たらなかったので「先ほど参拝したのは現実の神社だったのか?」と一瞬混乱しかけたが、考えてみたら一ヶ月以上前から財布は空っぽなので、あの千円札もまた私の願望が見せた幻に過ぎなかったのだ。