2019/01/18

眼鏡をかけている人は、みなどことなく賢さを感じさせる。だから私はそういう人を町で見かけるたびに思わず質問を投げかけてしまう。
「世の中は日に日に最悪の状態が更新され続けているように見えます。将来への甘い望みなどとっくに捨てたのに、さらに何かを捨て続けなければその場に立っていることもままならない。こんな地獄のような状況を一挙に好転させる知的な魔法のようなものを開発するのが、あなた方インテリの務めではないのですか?」
もちろん眼鏡をかけている人物がすべて知識階級に属するわけでないことは、私も理屈ではわかっていた。だからこの質問は声に出さないまま、心の中でしているのだ。
そのせいか、今まで一度もインテリたちから回答が寄せられたことはなかった。彼らも別に超能力者ではないのだから、訊きたいことは声に出して質問するか紙に書いたものを手で渡し、後日回答を郵送してもらったほうがいいだろう。