2019/01/17

武器を持った男がこちらに向かって走ってきたので、私は焦った。こっちは丸腰だぞ! そう叫びたい気持ちをこらえて、なるべく目立たないように電柱の陰に隠れるように立っていると、相手は私に気づいてしまった。
「あんた、武器はいらないかい?」
男はそう話しかけてきた。どうやら彼は武器商人だったらしい。私は安堵のあまり横柄な客のような口調になり「そんなものに払える金はないよ、不景気なんだから……」と答えた。
すると男は「金なんか要らないよ!」と言って押しつけるように武器を私に持たせると、いかにも清々した顔で鼻歌まじりにその場を立ち去ったのだ。
ずっしりと重く肩にのしかかる武器に私が戸惑ったのは、ほんのわずかな時間だった。すぐに喜びと興奮が上回り、私は手始めに遠ざかる武器商人の背中めがけて一発ぶっぱなした。
花火のように四散する男の肉体を眺めながら「いい買い物をしたな」と私はつぶやいた。
まるで金を払ったかのような言い草である。