2019/01/12

街を歩いていると、様々な場所に鳥居が立っていることに気づくはずだ。そうした鳥居の中には「これは果たして本物なのだろうか?」と思わず疑ってしまうような鳥居も時々ある。
「鳥居が立っていればその先にあるのは神社だと誰もが信じ込むことを利用して、自宅の玄関前に置いた大きめの箱に通行人が自主的に現金を入れていくことを期待しているのではないか?」
そういう疑いの目で眺めてみると、いかにも偽物めいた質感の鳥居もたしかに存在するのだ。神社に詳しくなく、また人を疑うことのない善良な人々はいともたやすくそんないかがわしい鳥居に騙され、生活費や老後のための貯金を巻き上げられてしまう。
また、そうした虚構の鳥居を設置する者の中には、本当に自宅が神社であり、自分が神主や巫女か何かだと信じ込んでいる気の毒な人もいるはずだ。そんな人を詐欺師呼ばわりして警察に突き出すのは気が引けるが、被害者がいる以上放っておくわけにはいかない……。
悩んだ末に私は、偽物と思われる鳥居には可愛らしい動物の描かれた警告シールを貼ることでさりげなく注意を促すことにした。
その結果「かわいい動物シールのある神社」として逆に人気が沸騰してしまい、それらの鳥居には初詣客による長蛇の列ができてしまうという思わぬ誤算が生じた。完全な不可抗力とはいえ、私もまたこの件に関して無罪とは言えない身となったわけだ。
だがこの地上には完全に無辜の人間など、どこにもいないのではないだろうか?