2018/12/28

私は年末というものをあまり快く思っておらず、いわば「アンチ年末」の立場である。
そのような人間がいることを、はたして世間の多数派の人々は本当に理解しているのか? 誰もがみな歳末の大売り出しに喜々として押しかけ、来るべき新年に期待を膨らませながら雑踏を足早に歩いていると思ったら大間違いだぞ。
そう叫びたい気持ちをこらえて家の中でベートーベンの交響曲を聞いていたら、突然演奏が止まってCDからベートーベンが話しかけてきた。
「たしかに自分たちを普通の側にいると信じている者たちは、少数派を取るに足らない例外とみなして無視するか、場合によっては異常な習慣を持った犯罪予備軍であるかのように攻撃を加えてくる。多数派であること自体がある種の権力なのだ、ということをなぜかれらは想像できないのだろう? 手に入れた力の自覚がないために、寛容になる契機も失っているのだとすればこんな不幸なことはない……」
私は大音楽家の理解を得られたことに満足し、年末のことはもはやどうでもよくなった。
だがベートーベンによる演説はまだ続いており、いっこうに演奏が再開されないことに嫌気がさした私はCDを叩き割ったのである。