2018/12/27

私の住んでいる部屋には時々幽霊が出ているような気がするが、私はそんな気がしたときは必死で顔をそむけたり、目を閉じたりして心霊現象を見ないように心がけているため、いまだ目撃したことはないし、実際のところここが呪われた部屋なのかどうか不明なままなのだ。
だが念のためお祓いをするに越したことはない。ある日そのことに気づいた私は部屋を出るとバス停に向かった。たいていの場所へは徒歩で行くため、ここからバスに乗るのは初めてのことだ。緊張して座席に腰かけると私はアナウンスに耳を澄ませた。どんな些細な停留所名もけっして聞き逃さず、少しでも悪霊を浄化する能力のある人物のいそうなバス停名が聞こえたら、すばやく降車ボタンを押す手はずだった。たとえば「霊能者自宅前」など。
だがどのバス停も平凡な住宅地らしい、単に耳に心地のいい響きの地名を告げるばかりでいっこうに私の期待に応えることはなく、やがて終点の植物園前に到着。
失望してバスを降りた私を待っていたのは、こんな季節にもかかわらず不自然なまでに咲き乱れる色とりどりの花だった。私にはそれらの花が、我が家に取りついている悪霊たちへ供えられた慰霊の花束のように思えてならなかった……。