2018/12/26

安定した生活を送りたいという気持ちが日に日に高まってきたので、おそらく一流企業などに就職すればいいのでは? という勘が働いた私はさっそく自転車に飛び乗ると街を走り回った。
徒歩なんて、そんなかったるいことはしていられない。 時代はスピードを求めているのだ。私は非常な速さでペダルをこいで近所の道路を走り抜けた。一流企業はどこにあるのか? 私の自転車はブレーキがきかないが、その点も現代のスピード感にふさわしく景色はまるでノートの罫線のように視界を流れていった。
まだ何も書かれていないまっさらなノートのページ。それがつまり、無職の私自身を象徴するイメージである。一流企業が喉から手が出るほど欲しがっている、まだ何色にも染められていない人材。いわばその人材を面接管の前へと送り届けるベルトコンベアがこの自転車なのだ。
やがて太陽が沈んで周囲が暗くなったので、私は充実した気分で帰途についた。
この自転車はライトが故障している。夜間の無灯火走行は大事故の原因となり、大変危険なのである。