2018/12/22

今この瞬間もどこかで誰かが大金を拾っているような気がする。その大金は私が拾うかもしれなかった金だ。誰かが拾ったせいで私が拾う可能性が永遠に消えたのだ。
そう思うと気分が落ち込んで私は物を破壊したい衝動に襲われた。だが衝動に任せて部屋の窓ガラスを破壊すると、外の寒い空気が室内に入り込んでしまうだろう……。
そこで私は、大金を拾おうとした人が腰をかがめた途端、猛スピードで飛び込んできたトラックに大金ごと轢きつぶされるところを想像した。
路上に散らばる紙幣と、紙幣のように平べったくなった誰か。 ああよかった、私じゃなくて。大金を拾わなかったおかげで命拾いしたぞ! そう思うと自然と笑顔が浮かび、心にやさしい気持ちがあふれてきた。
こうして窓ガラスの破壊は未然に防がれた。