2019/07/05

私は川村の家に行ったが、川村は留守だった。
そのかわり川村の家には高山がいた。
「どうして高山が?」
思わずそう声に出してしまった。
だが高山はそれには答えず、家の奥を指さした。
そこではうさぎと猫と猿を混ぜ合わせたような不思議な動物が、楽しげにダンスのような動きを見せていた。
私はもはや川村のことも高山のこともどうでもよくなり、その奇妙な動物の姿に見入った。
それからどれくらい時間が経ったのだろうか。
ふと私の心に「どうして高山が川村の家にいるのだろう?」という当初の疑問がよみがえった。
高山のほうを見ると、動物に夢中になっていて私の視線に気づいていないらしい。
たしかに夢中になってしまうのは仕方ないと思えるほど、なんとも不思議な動物なのだ。
私はそう思いながら動物に視線を戻した。
たちまち高山のことなどどうでもよくなり、動物の楽しげなダンスのような動きに見入ってしまう。
「どうしてまおえらがおれの家にいるんだ」
そう声がしたので振り返ると、川村が玄関先に呆然とした表情で立っていた。
私と高山はそれには答えず、黙って家の奥を指さした。
すると川村も動物の存在に気づいたようで目を見開き、じっとその動きに見入っている。
もはや私たちのことなどどうでもよくなっていることが、その表情から見て取れた。