2019/07/27

これから夏本番を迎えるにあたって、いったいどんな心構えが必要なのだろう?
私はこれまで数え切れないほどの夏を生きてきたにもかかわらず、そんな質問に対して咄嗟に的確な答えが用意できるとは云いがたい。つい考え込んでしまって、口ごもりながら「夏バテ防止のために、睡眠を十分にとって……」などとありきたりなことを語り出すくらいしかできないようだ。
だが心構えができていない人間にも容赦なく夏は訪れ、与えうるあらゆるものを与えるとともに、奪いうるあらゆるものを奪っていくのだ。
できるだけ過酷な夏との遭遇は避けたいものだ。涼しげな川原などに出向いて、バーベキューを楽しんだあとで花火大会を開催、といったスケジュールがもっとも理想的だ。
もちろん雨の場合は中止である。友人たちとの予定がその日しか合わないからといってむりやり決行すれば、にわかに増水した川に全員が流されるという悲劇が待っているのである。
涼しくてちょうどいいくらいだよ、などと軽口を叩いて雨の中で行われるバーベキューは、参加者たちのその後の人生を灰に変えてしまうのだ。
もちろん、台風が接近中の砂浜でバーベキューを行うことも絶対に避けなければならない。
ならばいっそのこと、あらゆるバーベキューを中止にしてしまってはどうか? ついそんな早急な結論を下しそうになるかもしれないが、夏の娯楽としてバーベキューほど時を忘れて楽しく過ごせるものは他にないのだ。誰もが持つ食欲という欲望を中心に据えて、それぞれが役割を果たすことでコミュニケーションを深め、ふと周囲に視線を向ければ非日常的な大自然が広がっている。
そんな経験は他ではかえられない貴重なものであり、天候の変化にさえ気をつければバーベキューじたいにとくに危険が大きいというわけではない。
家を出る前に天気予報をチェックするのはもちろんのこと、肉や野菜を焼いている最中も、ラジオをつけるなどしてつねに天気の情報に耳を澄ませておくのがいいだろう。
もちろん天気予報を聞くことに夢中になるあまり、網にのせたまま放置した肉が炭になってしまっては、本末転倒もいいところなのだが。