2019/07/25

オレンジ色に発光する飛行物体が、夜空を右から左へと通過していった。
いかにも夏めいた果実の色を思わせる光だったので、あれがもしUFOだとすればその乗組員たちの住む星はきっと常夏の星なのだろう……そんなふうに思いを馳せていると、私もまたその星に行きたくてたまらなくなった。
「だが地球にはそんな素敵な星へとみずから出かけていくための手段が、まだ誕生していないようだ。そう考えてみると、すでに膨大な歳月が流れていると思いがちな人類の歴史も、実はまだほんの赤ん坊の段階に過ぎないのかもしれないな」
私はそんな厳しい現実に直面して、思わずため息をついた。
思わずUFOに向かって手を振って、ヒッチハイクを試みようとしてすぐに思いとどまった。
「宇宙人に誘拐されてさまざまな人体実験の材料にされたり、何らかの機械のようなものを体に埋め込まれたりといった報告は後を絶たない。たとえ常夏の夢のような惑星の住人であっても、向こうから見ればこちらは観光客としてさえ歓迎対象ではない、ただのネズミやニワトリのような存在の可能性がある。うかつに接近を試みるのも考え物だ」
常夏の惑星のことは、今はただ心の中の夢の状態にとどめておくのが賢明なのかもしれない。
いつかこの地球がそんな理想的な惑星へと生まれ変わる日が来たなら、宇宙から見たこの星は青からオレンジ色にすっかり変化しているだろう。
その際は宇宙からたくさんの観光客が訪れることが予想されるが、けっしてむやみに人体実験などをしないことを、今から心がけておきたいものである。