2019/07/15

ロボットを見かけた。最近はロボットが一人で外を出歩いているのか、大したもんだなと思いながら私が目で追うと、ロボットは橋の上で突然バランスを崩し、欄干を越えて真っ逆さまに落ちてしまった。
べつに人間ではないのだから助ける必要はないが、いちおう橋の上から覗き込むと案の定、ロボットは川底で大の字に動かなくなっていた。
水に沈んでいるロボットというのも涼しげでいいものだな。
そう思った私はしばらく眺めていたが、喉が渇いたので近くのコンビニへ行ってせっかくだから缶チューハイを買ってもどってきた。
川底でゆらゆらと光の反射の中にまどろむロボットを見ながら飲む酒は格別だ。これぞ納涼というものだという気分に浸っていたら、どうやらそう感じたのは私だけではないらしい。
つられたように手に手にビールやチューハイなどを持った人が集まり、みんな無言で川を見下ろしながら酒を飲み始めている。
川底で仰向けに横たわるロボットを眺めながら酒を飲む。そんなコンセプトのビアガーデンがこの夏は流行するのではないか?
ビジネスチャンスはこのような偶然の中から発見されるのをいつも待っているのである。
ビアガーデンだけではなくさまざまな飲食店に応用できるし、ロボットの沈んでいる涼しげな川をそうめんが流れてくる、といった新たな流しそうめんの可能性まで見えてくる。
もしこれから「川底に横たわるロボット」が日本の夏の代名詞になったなら、それは今日この場で起こったハプニングがすべてのスタート地点だったということをぜひ覚えておいてほしい。
もちろんこうした流行は思いのほか廃れるのが早いのもまた事実だ。
来年の夏にはもはや誰も覚えていないかもしれないと思うと、私は急に諸行無常を感じて、つい酒が進んでしまう。