2019/06/24

聞くところによれば、UFOは特定の土地の上空に頻繁に出現するのだという。
もちろんその理由は我々の知りうるところではないが、その土地の地底などにUFOのための秘密基地が存在することは、容易に想像できる話だろう。
「人々がちょんまげを結っていた時代ならいざ知らず、もはや誰もちょんまげを結っていない現代に地面の下に基地など勝手につくられて近隣住民がうっかり気付かない、などということがありえるだろうか? 我々の科学的な水準がそんなぼんやりしたお猿さんレベルの時代をとっくに通り過ぎているのは明白なのだ」
そんな疑問の声を漏らす人も、おそらく少なくはないはずである。
だが考えてみてほしいのは、UFOなどを空に飛ばすような存在(それは地球外生物という説と、地球上の隠された何らかの怪しい組織だという説がある) の誇る科学の水準は、我々の想像することのできない非常な高さに到達していると想定できるということだ。
地中深くどころか、家のすぐ隣の空き地にかれらの秘密基地をつくられても、我々はまったく気づかないまま晩ご飯の支度をしたり、テレビのバラエティ番組に笑い声をあげているのではないか?
それほどまでの文明の格差を認めるのは、誇り高い先進国の人間には屈辱的かもしれない。だがここは謙虚に現実を受け止めるとすれば、我々の社会とUFOの世界は平然と重なったまま何百年、何千年という歳月を過ごしていたとしても不思議ではない。
蟻が人類の存在を意識することはなく、たまに踏まれたりいきなり掴まって足をもがれるなどの災難に遭った時だけ「何か知らないが巨大なもの」として認識するように、我々がUFOだと云って写真に撮って騒いだりしている代物は、蟻にとっての人間の手足のようなものかもしれない。
「この話を近所のUFO研究家の青年に話したらどんな顔をするだろう? 目を輝かせて聞き入るか、それともそんな夢のない話は聞きたくないと云って耳を塞ぐのか。どちらを選ぶかで、あの青年の探求心が本物かどうかがわかることだろう」
そうつぶやきながら私は青年の顔を頭に思い浮かべた。
まるでちくわに目鼻を付けたような興味深い顔だった。今度見かけたら、写真にでも撮っておこう。