2019/03/18

もはやこの社会から、インテリとしての責務を果たす気概のある人間はすっかり失われたようだ。
高いレベルの教育を受けた者ほど、そのことで自分が世の中から何かプレゼントを生涯にわたって貰い続ける権利を持つのだと思い込んでいるふしがある。
インテリになるということは、すでにプレゼントを山のように受け取った結果だということがわからないほど、彼らの中には根拠のない被害者意識が広がっているのかもしれない。
城のように頑丈で一般人から手の届かない部屋の窓からしか、彼らは意見を述べようとしない。その意見もすべて、背後の本棚に並ぶ「正しい意見全集」に書かれた言葉の引用だ。うっかり油断して隙を見せた瞬間、ろくに授業に出たこともない野蛮人たちがデマに先導されて自分を襲撃してくるという妄想に、インテリたちは苦しめられているのだ。
そんな彼らの苦しみを取り除くには、インテリだけに配られる帽子などを政府が発行し、それを被ることで彼らの自尊心を満足させるなどの措置が必要だろう。
その帽子は一見したところ野球帽に似ているが、正面に刺繍されているのはどの球団のマークでもなく、その人物がインテリだということを示す賢そうなフクロウのイラストなのだ。
自分たちはフクロウのように知恵の象徴とみなされるべき人材なのだ、という自覚を促されることで、インテリたちはカーテンに閉ざされた暗い部屋を飛び出して、一般人との積極的な交流を開始するのかもしれない。