2019/03/14

自分のこれまでの人生を紙芝居に仕立て、全国各地を回って上演したい。そんな願いを持つ中高年の男女は多いことだろう。
実際に紙芝居を製作するには単に絵がうまいだけでなく、初めて目にする子供たちにも親しみやすい絵柄であることが重要だ。ただし古臭かったり、生理的な嫌悪感を催すような絵は問題外である。
子供の感受性は非常に鋭いが、同時にちょっとしたことでひび割れてしまうガラス細工のようなもろさを備えており、いたずらに刺激的なエピソードなどは適宜オブラートに包んで差し出すことも必要だ。
登場人物を動物のキャラクターにすることで、現実の持つ生々しさを軽減するという方法もある。
自分がモデルになっている登場人物を牛馬や犬猫として描くことには、抵抗を感じる人も多いだろう。中には「私が人間以下の存在だという意味なのか!?」と屈辱をおぼえ、そんなアドバイスをしてきた人間(紙芝居のプロなど)に棒で殴りかかるような人もいるかもしれない。
だが紙芝居を楽しみにして集まってくる子供たちは、けっして私たちの生臭い虚栄心や自尊心の展覧会を見に来るわけではないのだ。
かれらの新品のビー玉のような瞳に映し出すにふさわしい、夢となんらかの役に立つ教訓を与える優しげなストーリーを提供するのが、私たち大人の役割だと言えないだろうか?
そんなことを少しだけ心の底に留めておくことで、いずれ開始されるべき全国の「紙芝居の旅」が成功を収めるかどうかが、恐らく決定するのである。