2019/02/05

「仕事がないので店でも始めたいのだが、何を売ればいいだろうか?」
「焼き芋がいいんじゃないですかね」
「ほほう、それはどうして?」
「焼き芋はとてもおいしいでしょう? おまけに手に持ったりポケットに入れると温かくてカイロ代わりにもなります。現代の消費者は何かそういった付加価値のあるものを求めて町をさまよっているのですから、焼き芋の表面に役に立つことわざなどを一つ一つ書いておけば、さらに価値が上がって飛ぶように売れるはずですよ」
「ありがとう、大変ためになったよ。ぜひ実現させようと思う」
「では、コンサルタント料として500円いただきます」
「さっきも言ったように、仕事がなくて今は金が全然ないんだよ。そこで相談だが、焼き芋の売上げの10パーセントをきみに払うというのではどうかね?  年間1000万の売り上げなら、きみには100万が振り込まれる。悪くない話だと思うのだが」
私は彼の提案を受け入れ、100万円が振り込まれるのを楽しみに待ち続けた。
だが二年、三年と経っても口座には一円も振り込まれた様子がないので、不思議に思いさきほど調べてみたところ、彼は三年前に火事で死亡していることがわかった。
大量のサツマイモをたき火で焼こうとしたら衣服に火が燃え移り、そのまま隣接する木造アパートもろとも全焼したのである。
もちろん大量の芋はどこか近所の畑から盗まれたものだった。だから悪質な芋泥棒の彼には、正当な天罰が下されたのかもしれない。