2019/02/17

とくに何も起きない日は、かわりに心の中で様々な劇的な場面、楽しい出来事や悲惨な事件、心を洗われるようなエピソードなどを想像すると、まるで魔法のように充実した一日になることをご存じだろうか?
私は今日、心の中で巨大な噴水とその向こうにひろがる青空を眺めていた。それだけでは物足りないと感じたので、噴水池から訳の分からないことを叫びながら飛び出してくる老婆を想像したところ、その老婆が右手にぎらりと光る刃物を持っていたので大変なことに。噴水の周囲で日向ぼっこをしていた人々はたちまちパニックに陥り、蜘蛛の子を散らすように逃げていったのだ。
だがよく見れば老婆は、左手にサンマのような魚をぶら下げていた。当然のようにその場でサンマをさばき始め、見事に三枚におろしてみせたのである。
逃げた人たちはとんだ早とちりだったわけだ。老婆は恐らく、噴水池で泳ぐサンマ(のような魚)をすばやく見つけ、飛び込んで捕獲したところだったのだろう。
一人だけ物陰から一部始終を眺めていた、小学校低学年くらいの女の子がいた。老婆の包丁さばきに感銘を受け、拍手しながら近づいていったのだ。すると老婆はさばいた魚の身をそのへんに放り捨てると、刃物を振り上げて女の子の頭部に突き立てた。
びっくりした顔で立ち尽くしている女の子。私もびっくりである。まさかこんなことになるとは誰にも予想もできなかったのではないか? 人間の心は紙風船のようにからっぽで、ちょっとした風向きでどこへでも転がるものだという教訓が、この事件から得られたような気がする。