2019/02/11

この世の中を自由に駆け巡って人々に幸福を配るサンタクロースのようなものであるべき金銭が、一部の特権階級の人々に独占され、ただかれらの広大な面積を誇る金庫の隙間を埋めるためだけに使用されているという噂を耳にした。
私は大変な怒りを覚え、それらの強欲な資本家たちにこの世の大半を覆う貧困の現実を知らせ、改心して金庫の金を貧しい人々にプレゼントするサンタクロースになってみてはどうか? という提案をするために(昼食のラーメンを食べている途中だったが)あわてて家を飛び出すと、丘の上に続く坂道へ向かって駆けだした。
だが坂の半ばほどに達した頃だろうか? 私の体力はついに限界に達し、それ以上は一歩も進めないという状態に陥ってしまったのである。
「こんな急な上り坂は、具のないラーメンを毎日のように食べている軟弱な人間に上りきることは不可能なのだ。やはり分厚いステーキが必ず食卓に登場するような富裕層だけが歩いて行ける場所に、かれらの住む町は広がっているのかもしれない」
私の心にそうした考えが浮かぶと同時に、たどり着けなかった幻の高級住宅地への憧れのようなものが胸にふわふわと生じたため「いつかそんな町を心ゆくまで散歩してみたい」という当面の目標が独り言の形で口から漏れてきたのだった。