2019/02/24

パソコンはあらゆることを実現していく魔法の箱のようなものだが、まるで引き換えのようにこの社会に暮らす人の心は荒廃し続けている。
他人への思いやりの精神が失われていった結果、たとえばいかにも貧しそうな人々の住む通りに並ぶ無数の郵便受けの一つ一つに、封筒に入れた札束を無言で放り込んでいく。といった慈愛に満ちた行為を実行する資産家はまるで見当たらなくなってしまった。
私は毎朝起きると必ずアパートの郵便受けを確かめるのだが、そのような封筒が入っていた記憶はない。届いているのは企業のDMか税金などの督促状や差押さえの勧告ばかりで、ようするに他人の金を毟り取ろうとする卑しい精神が送り付けてきた郵便物ばかりなのだ。
今日などは郵便受けの蓋を開けた途端、何らかの生き物が勢いよく飛び出して私の顔を鋭い爪のようなもので引っ掻くと、そのままどこかへと去ってしまった。
しばらく呆然と立ち尽くしたのち、気を取り直して鏡に映してみたところ、私の顔の生々しい傷跡は「隣人愛」という文字に見えた。
一瞬だけ邂逅した未知の生物が、私に伝えたかったメッセージなのだろうか? その本当に意味するところをぜひ知りたいものだが、傷跡が癒えるまでのわずかな月日に、私は果たして答えを見つけられるのだろうか。