2019/02/08

天気のいい日は屋上など高い所にのぼり、心に浮かんだ名前を気ままに叫んでみたくなる。
私が名前を叫んだとき、通行人の誰かが振り向いたとしよう。その人こそまさにたまたま私が呼んだのと同じ名前の人なのだ。そんな偶然の出会いがこの世にあるのだと確認できたら、人生にひとつの珍しい彩りが添えられ、自然に笑顔が浮かんでくるに違いない。
自分が呼ばれたと思い込んだ人は、当然のように怪訝な顔で近づいてきて、何の用があるのかと私に訊ねるだろう。
もちろんこちらはその人に何の用事もないし、とくに会話がしたいわけでもない。だから簡潔に事情を説明して、すぐにどこかへ立ち去ってもらうことになる。
中にはしつこい性格の人もいて、執拗にねちねちと抗議してきたり、動物のように怒りをあらわにするかもしれない。その際はさっさと対応を打ち切ってひたすら無視するに限る。
何しろこちらは高い所にいるので、何を言われてもあまり気にならない。正直な話、よく聞こえないのである。