2019/01/01

通りを歩いていると、むこうから若い男の警官がやってきた。警官は遠くからでもわかるほどこちらを険しい表情で凝視している。私はそしらぬ顔ですれ違おうとしたが案の定呼び止められてしまった。
「きっと声をかけられると思ってましたよ」
私はこんなのはよくあることだ、べつになんでもないといわんばかりに微笑んでそう言った。
「声なんてかけてませんよ」
警官はなぜか不思議そうに首をかしげてそう答えた。
「かけたじゃないですか、今私の名前を呼んだでしょう?」
私が口をとがらせると、警官は眉をひそめてこう言う。
「呼ぶわけないでしょうが。おれはあんたのことなんて全然知らないんだから」
なるほど、それもそうだと納得した私は突然の無礼を丁寧に詫びると、その場で〈警棒を携えた紳士〉と別れた。
しばらく歩いてからふと気になって、立ち止まった私は後ろを振り返ってみた。
すると警官もやはり立ち止まって遠くからこちらを見つめている。
その姿は今しも空をオレンジ色に染め始めた初日の出をバックに、町の模型に据え置かれた警官の模型のように見えた。
私は彼から、どんなふうに見えただろうか?