2018/12/05

真面目に仕事をしている人を見ると、うしろから「わっ」と声をかけて驚かしたくなる。 今日は銀行で窓口の人がうしろを向いた瞬間に「わっ」と声をかけた。するとその行員は驚きのあまり気絶してしまった。見ればほかの行員も警備員も客も、みんな気絶して床に倒れていた。私の声があまりに大きすぎたのだろうか……。
つい出来心で目に入った大金をわしづかみにして私は外に飛び出た。だがすぐに良心の呵責にさいなまれ、銀行に引き返すと何事もなかったように営業が再開している窓口で、事情を説明して私は大金を返却した。行員からは大変感謝され、記念品として豚の貯金箱を贈呈された。
「資本主義の豚の手先め、これはいったい何の冗談のつもりだ?」
私はなぜか激昂して行員の顔に貯金箱をたたきつけた。貯金箱は粉々に割れたが行員はにっこりと柔和な笑顔のまま、だが目だけは無表情に私を眺めている。
その両目はどこか上等なマロングラッセを思わせるものがあり、食欲をそそられた。