2018/12/12

遠くのほうからトラックが近づいてきた。私はトラックを見ると何を運んでいるのか気になる方だ。
資材や土砂などにはあまり興味がないが、マネキン人形などが運搬されている場合、つい走って後を追いかけたくなってしまう。もちろん全力で走っても相手には追いつけないし、一瞬で通り過ぎるトラックの荷台にあるものがマネキンなのか、それとも本物の人間の死体なのかを見極めるのは困難だ。結局のところ、想像で補ってその想像を何度も心の中で反芻することになる。
写真に撮って後でゆっくり見よう、という判断をするにはいつもトラックはあまりに唐突に現れるのだし、たいていは資材や土砂、あるいは自転車や動物などが積載されているにすぎない。そういったものには興味がないのだ。うかつにそんな無用の荷台に近づいて、何かの拍子で脱走に成功した動物などに襲われたら命の危険があるのではないだろうか?
さまざまな思いや記憶が頭の中をよぎり、ふと気づいて顔を上げるとこちらに近づいているはずのトラックの姿は跡形もなかった。おそらくどこか手前の横道へ折れてしまったのだろう。期待したところでほとんどのトラックはそんなものなのだ。運ばれているマネキンの顔も皮肉な笑みを浮かべている。