2018/12/01

家賃を振り込んだら口座と財布が空になり、掃除中の鳥かごから誤って小鳥を逃がしたような寂しさに私は襲われた。
なので金銭のかわりにきれいな貝殻や、きれいなガムの包み紙などをATMから入金しようとしたところ係員が飛んできて注意を受けた。
「自分の口座に何を入れようとおれの勝手だろうが!」
私が正当な権利の主張をしていると「どうしたのかね」と品のいい紳士が奥のほうから現れた。差し出された名刺に「支店長」と書かれていた彼は話の分かる男で「お客様の仰ることももっともだ。今すぐATMを改造して貝殻でも蜜柑の皮でも入金できるようにしなさい」と命令が下されたのだが、支店長の権限ではそこまでできないことが数分後に判明。うちひしがれる彼に向かって「今日はその気持ちだけしっかりと受け取っておくよ」そう声をかけた私は、いずれ金融界に革命を起こすだろう男と固い握手を交わすと、クリスマスイルミネーションの灯り始めた繁華街へと消えていった。