2019/07/23

青空にぽっかりと浮かんでいるものと云えば、雲かUFOと考えるのが普通だろう。
ついさっき窓から外を眺めたとき、空に浮かぶ白いものを見て私が連想したのもその二つだった。
次の瞬間から、そのどちらが正解なのだろうという推論が私の脳内で開始される。
私のよく知る、つまり映画などでよく見るUFOの形状とはまるで似ていないようだ。では雲なのかというと、それにしては輪郭がくっきりし過ぎていて、質感も異なるように思える。
じゃあいったい何なんだ! 私は苛々してきて、持っていた鉛筆を空に向かって投げつけた。
だが窓が閉まったままだったので、ガラスに跳ね返された鉛筆は私のほうへ飛んできて、そのまま眉間の辺りに突き刺さった。
そのとき、偶然私の脳神経に加えられた刺激がスイッチのような役目を果たしたのだろうか?
にわかに鮮明になった思考が、まるで専用のコンピューターから吐き出された答えのように私にひとつの回答を示したような気がしたのだ。
「あれは豆腐だ、おそらく絹ごし豆腐」
青空を背景に浮遊する巨大な絹ごし豆腐は、今では私の部屋の窓枠から外れて死角へと消えていこうとしていた。
ほんのわずかな時間ではあったが、これまで見たことのないような形で豆腐を見つめることになった私は、たぶんそのせいでにわかに豆腐が食べたくなっていた。
「この暑さならやはり冷奴で食べるのが正解だろう。むだなガス代などを使わなくて済むところもきわめて経済的だ」
そうつぶやきながら私は冷蔵庫へと向かった。何日か前に買ったはずの豆腐が、いまだ消費期限内であることを願いながら。