2019/02/26

黒い屋根の家があった。その黒さにはとくに興味がわかなかったが、玄関のドアが茶色いところは気になった。
もしかしたら部屋のドアも茶色いのではないだろうか?
そう思うと居ても立ってもいられなくなり、その家の庭に忍び込むと窓から部屋を覗き見た。すると案の定、茶色いドアがあったので私はまんざらでもない気分だった。
ここでおとなしく帰ればよかったのだが、私はつい欲を出してしまった。
これはひょっとすると、トイレのドアも茶色いのではないだろうか? そんな考えが頭に浮かんだ途端、私は窓を開けてその家の中に侵入していた。
部屋のドアを開けて廊下に出ると、すぐにトイレのドアを発見した。
だがドアは茶色ではなかった。どういうわけか紫色だったのだ。
その色を見て私は近所の公園でよく見かける皺だらけの老婆の髪の色を連想した。
後日分かったことだが、私が侵入したのはその老婆の自宅だったのである。
なんとも不思議な話ではないか。